文字
歴史の異説 / シェイクスピア

シェイクスピアの正体は別人だった

英文学史上最高の劇作家。しかし彼が本当に書いたという証拠は、意外なほど少ないと言われています。

Since:19世紀〜Evidence:3

『ロミオとジュリエット』『ハムレット』『マクベス』。400年以上たった今も世界中で上演され続ける名作の数々を生んだのが、ウィリアム・シェイクスピアです。ところが、この偉大な劇作家には、昔から奇妙な疑いがかけられてきました。本当に彼が書いたのか、という疑いです。

シェイクスピアは、イングランドの地方都市ストラトフォード・アポン・エイヴォンの商人の家に生まれました。大学に通った記録はないとされます。それなのに彼の作品には、宮廷の作法、法律、外国の地理、古典の知識がふんだんに盛り込まれている。地方出身の一俳優に、本当にこれが書けたのだろうか、と疑う人々が現れたのです。

さらに、彼が残した遺言書には、本や原稿についての記述が見当たらないとされます。本人の手による署名もわずかしか残っておらず、そのつづりもまちまちです。偉大な作家の痕跡にしては、あまりに少ないのではないか。直筆の原稿も、ほとんど残っていないとされます。

では、本当の作者は誰なのか。哲学者フランシス・ベーコン、貴族のオックスフォード伯、劇作家クリストファー・マーロウ。候補者は数十人にのぼるとも言われます。仮面の奥の素顔をめぐる推理は、今も続いています。

  • 大学に行っていない

    シェイクスピアが大学で学んだ記録がないことが、疑いの出発点です。作品に見られる幅広い教養と経歴が結びつかない、と考える人がいます。

  • 本の出てこない遺言書

    シェイクスピアの遺言書には、妻に「二番目に良いベッド」を遺すといった記述がある一方、蔵書や原稿については触れられていないとされます。作家らしくない遺言だと指摘されます。

  • 著名人も疑った

    作家マーク・トウェインや精神分析学者フロイトも、シェイクスピア別人説に関心を寄せたことで知られます。名だたる知識人の支持が、この説に箔をつけてきました。

シェイクスピアの没後、1623年に同僚の俳優たちが作品集を出版し、劇作家ベン・ジョンソンらが作者をたたえる詩を寄せています。当時の劇団の記録や出版物などから、ストラトフォード出身のシェイクスピアを作者とみるのが、研究者の間で主流の考え方とされています。

当時の文法学校でもラテン語や古典の教育が行われていたとされ、大学に行かなかったことが作品を書けなかった理由にはならない、という指摘もあります。有力候補とされるオックスフォード伯は、いくつかの作品が書かれたとされる時期より前に亡くなっていることも知られています。

ちなみに、ストラトフォードの教会にあるシェイクスピアの墓の墓碑には、自分の骨を動かす者に呪いあれ、という意味の言葉が刻まれています。2016年には、墓を傷つけないレーダー調査が行われ、頭部のあたりに乱された跡があるとの結果が報じられ、頭蓋骨が持ち去られたのではという古い言い伝えが再び注目されました。

さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら