ウラ話大全URA-BANASHI
科学・生活の俗説 / 万里の長城

万里の長城は、宇宙から肉眼で見える唯一の建造物

月から地球を眺めたとき、人の手でつくられたもので見えるのは、ただひとつ万里の長城だけだと言われてきました。

Since:20世紀〜Evidence:3

中国の北部を、山を越え谷を渡り、竜のようにうねりながら続く万里の長城。紀元前から何代もの王朝が築き、つなぎ、修復してきた人類史上最大級の建造物です。その圧倒的なスケールを語るとき、決まって添えられる一言がありました。「宇宙から肉眼で見える、唯一の人工物」。

この話は、驚くほど古くから語られてきたと言われます。人類がまだ宇宙へ行く手段を持たなかった時代から、「月から見える建物」として紹介されていたとする説もあるほどです。本や雑誌、クイズ番組で繰り返されるうちに、いつしか誰もが知る常識になりました。実際に月まで行った人がまだいないのに、なぜ月から見えると分かったのか。そんな素朴な疑問を口にする人は、ほとんどいませんでした。

教科書的な豆知識として語られることもあり、中国の人々にとっても誇らしいエピソードでした。宇宙飛行士が地球を見下ろすと、青い海と白い雲の間に、一本の細い線がくっきりと浮かぶ。そんな光景を思い浮かべた人は少なくないはずです。人類が宇宙へ飛び出し、月面にまで降り立ったあとも、この話が揺らぐことはありませんでした。むしろ「宇宙飛行士も見たらしい」という尾ひれまで付いて、ますます確かな話のように語られていったのです。

ところが21世紀に入り、実際に宇宙から地球を見た人の口から、思いもよらない言葉が語られることになります。

  • 桁外れの長さ

    長城は数千kmどころか、支線を含めると2万kmを超えるとする調査もあります。これだけ長ければ宇宙からでも見えるはず、と考えるのはごく自然な発想です。

  • 宇宙時代以前からの定説

    宇宙飛行が始まる前から語られていたため、長い間「確かめようがないけれど、そういうものだ」と受け入れられてきました。古くからある話ほど、疑われにくくなります。

  • クイズや本の定番

    雑学本やクイズ番組で「正解」として紹介されたことで、多くの人が事実として覚えました。何度も目にした情報は、それだけで本当らしく感じられます。

長城は非常に長い一方で、幅は多くの場所で数mから十m程度しかなく、色も周囲の山や土とよく似ています。そのため、国際宇宙ステーションが飛ぶ高度約400kmからでも、肉眼で見分けるのはきわめて難しいとされています。月までの距離は約38万kmあり、そこから個別の建造物を肉眼で見ることはできません。

2003年には、中国初の有人宇宙飛行を果たした楊利偉さんが、帰還後に「長城は見えなかった」という趣旨の発言をして話題になりました。一方で、条件がよければ見えたという宇宙飛行士の話や、望遠レンズを使って撮影された写真もあり、「肉眼でくっきり見える唯一の建造物」という言い方が誇張だった、というのが一般的な理解です。

ちなみに、「万里」の1里は日本の約4kmとは違い、中国では約500mとされるため、万里はおよそ5000kmほどの意味になります。ところが2012年に中国当局が公表した調査では、各時代の長城を合計した総延長は約2万1000kmとされました。名前の「万里」でも、実はまだ控えめだったのです。

さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら