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科学・生活の俗説 / 闘牛

闘牛の牛は、赤い色に興奮して突進する

ひるがえる真っ赤な布。砂煙を上げて突っ込んでくる巨体。あの牛は本当に、赤い色に怒っているのでしょうか。

Since:近代〜Evidence:3

スペインの闘牛場。満員の観客が見守る中、きらびやかな衣装をまとった闘牛士が、赤い布を静かに構えます。次の瞬間、黒い牛が地面を蹴って猛然と突進。布をかすめて駆け抜けると、場内は大きな歓声に包まれます。何度でも、牛は赤い布めがけて突っ込んでいきます。

この光景から生まれたのが、「牛は赤い色を見ると興奮する」という話です。赤は血や炎を思わせる、怒りと闘争の色。その色を目にした牛は、本能的に敵意をむき出しにするのだと言われます。英語にも、相手をひどく怒らせるものを「牛にとっての赤い布」にたとえる言い回しがあるとされ、世界中で信じられてきました。

日本でも、赤い服を着て牧場に行くと牛に追いかけられる、という話を耳にすることがあります。牛の前では赤いものを身につけないほうがいい。そんな注意を、半ば本気で守っている人もいるようです。

闘牛士はなぜ、わざわざ牛を怒らせる色を選んだのか。その赤い布には、観客をも熱狂させる、特別な力が宿っているのかもしれません。

  • いつも赤い布で突進する

    闘牛の終盤に使われる布「ムレータ」は赤い色をしています。赤い布に牛が向かっていく場面ばかりが印象に残るため、赤が原因だと考えるのは自然なことです。

  • 赤は興奮の色というイメージ

    赤は人間にとって、血や炎、怒りを連想させる色です。人間が感じるそのイメージを、牛にも当てはめたくなってしまいます。

  • ことわざにもなっている

    英語などにも、赤い布と牛を結びつけた言い回しがあるとされます。言葉として定着していることが、この説を常識のように感じさせています。

牛の目は、人間とは色の見え方が異なるとされます。人間の目には色を感じる細胞が3種類ありますが、牛は2種類しか持たず、特に赤にあたる長い波長の光を見分けるのが苦手だと考えられています。そのため、牛にとって赤い布は、人間が見るほど鮮やかな色には映っていないと言われます。

牛が突進するのは、布の色よりも、目の前で大きく揺れ動くものに反応しているためだという説明が一般的です。闘牛の序盤では、赤ではなく桃色や黄色の大きな布「カポーテ」が使われますが、牛はこちらにも同じように突進するとされます。ムレータが赤い理由については、牛の血が目立たないようにするため、あるいは観客に向けた演出のためだと言われています。牛を興奮させているのは色ではなく、闘牛士の巧みな布さばきなのかもしれません。

ちなみに、赤いものを見るとかっとなるのは、牛よりもむしろ人間のほうかもしれません。赤い色が人の気分や行動に影響するかどうかは、さまざまな研究の対象になってきたと言われます。闘牛場の赤い布は、牛ではなく観客の心を熱くするための色、と考えると、少し見え方が変わってきます。

さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら