1999年7の月、恐怖の大王が降ってくる
16世紀の医師が残した一篇の詩。そこには1999年に人類が滅ぶと書かれていると、日本中が震えた噂です。
噂の内容
16世紀のフランスに、ミシェル・ド・ノートルダムという医師がいました。ラテン語風にノストラダムスと呼ばれる彼は、未来を見通す詩を書き残したとされます。四行ずつの謎めいた詩が、実に千篇近くも並ぶ予言集です。彼は王妃に招かれたこともある、当時の名士でした。
その中に、ひときわ有名な一篇があります。1999年の7の月、空から恐怖の大王が降ってくる。年号がはっきり書かれた数少ない詩として、この一節は何百年も人々の注目を集めてきました。恐怖の大王とは何なのか。解釈は数えきれないほど生まれました。
日本でこの予言が爆発的に広まったのは1973年のことです。予言を解説した一冊の本がベストセラーとなり、映画やテレビ番組が次々と作られました。恐怖の大王とは核戦争なのか、巨大隕石なのか、それとも未知の何かなのか。子どもたちは1999年に自分が何歳になるかを指折り数え、本気で怯えたと言われます。夏休みの話題が、世界の終わりだったという人もいるほどです。
フランス革命もナポレオンの登場も、彼の詩に予言されていた。そう信じる人々にとって、1999年は避けられない運命の年だったのです。世紀末が近づくにつれ、テレビや雑誌では予言の特集が繰り返し組まれました。
ささやかれる証拠
年号が
明記されている 予言詩の多くは時期がはっきりしませんが、この詩には1999年という年がはっきり書かれています。これほど具体的なら何かが起きるはず、と思わせる力がありました。
過去の
的中例 フランス革命やナポレオン、第二次大戦などを言い当てたとする解釈が数多く出版されてきました。当たった実績があるなら、次も当たるかもしれないと考えるのは自然です。
宮廷に
仕えた 実在の 人物 ノストラダムスはフランス王家とも関わりのあった実在の医師・占星術師です。怪しげな人物ではなく、当時の知識人だったことが信頼感を与えています。
世紀末の
不安 冷戦、公害、環境問題と、20世紀後半は将来への不安が大きい時代でした。世の中の空気が、予言をよりリアルに感じさせていたと言われます。
表向きの説明
ノストラダムスの予言集は1555年に初版が出版されました。詩は比喩や古い言葉を多く含む難解なもので、どの出来事にも当てはめられるほど解釈の幅が広いと指摘されています。過去の的中例とされるものの多くは、出来事が起きた後に詩を当てはめた解釈だとされます。
1999年7月を過ぎても、予言に書かれたような人類規模の破滅は起きませんでした。日本での大流行は、1973年に出版された五島勉氏の著書『ノストラダムスの大予言』の影響が大きかったとされ、当時の世相を映す社会現象として振り返られています。予言を読み解く解釈本は、ほかにも数多く出版されました。
ちなみに、ノストラダムスは予言だけでなく、化粧品やジャムの作り方をまとめた本も出版しています。砂糖漬けや美容の処方がずらりと並ぶ、いわば暮らしの実用書です。当時の医師にとって、薬と菓子づくりは近い技術だったとも言われます。恐怖の大王の作者は、ジャムのレシピの作者でもあったのです。
さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら