ゴビ砂漠には毒を吐く巨大ワームが潜んでいる
砂の下からぬっと現れる、赤黒い腸のような怪物。触れただけで命を落とすと、遊牧民は語り継いできました。
噂の内容
見渡すかぎり砂と岩が続くゴビ砂漠。そのどこかに、目も口も見分けがつかない奇妙な生き物が眠っているといいます。モンゴルの人々は、それを「オルゴイ・ホルホイ」と呼んできました。意味は「腸の虫」。その名のとおり、牛の腸のような赤い胴体をしていて、長さは1メートル前後とも、それ以上とも言われます。
恐ろしいのは、その攻撃方法です。噂によれば、デスワームは離れた相手に毒液を吹きかけ、浴びた者はたちまち倒れてしまう。さらには電気を放って、触れたラクダや人間を一瞬で仕留めるという話まであります。金属に反応するとか、黄色いものに引き寄せられるとか、細かな言い伝えも各地に残っています。そのため遊牧民は、砂の上に不自然な盛り上がりを見つけると、決して近づかないようにしていると言われます。
姿を見せるのは、一年のうちでも暑さが厳しく、雨が降ったあとの時期だけとされます。ふだんは砂の中深くに潜り、じっと時を待っている。遊牧民が「その名を口にするのも縁起が悪い」と嫌う、という話も伝わっています。
20世紀に入ると、この怪物の噂は探検家たちの耳にも届きました。以来、何度も調査隊が砂漠へ向かいましたが、決定的な証拠を持ち帰った者はいません。広大な砂の海は、今もその秘密を飲み込んだままです。それでも挑戦者が後を絶たないのは、この怪物がそれだけ魅力的な謎だからでしょう。
ささやかれる証拠
高名な
探検家も 記録した アメリカの探検家ロイ・チャップマン・アンドリュースは、1920年代の著書でモンゴルの高官からこの生き物の話を聞いたと記しているとされます。欧米に知られるきっかけになった記録です。
遊牧民の
証言が 一致する 離れた地域に暮らす人々の話でも「赤い」「太い」「毒を持つ」といった特徴が共通していると言われます。昔から身近な脅威として語られてきた、というのが信じる人の主張です。
何度も
調査隊が 組まれた 1990年代以降、チェコの探検家イヴァン・マツケルをはじめ、各国の調査隊がゴビに入ったとされます。本気で探す人が絶えないこと自体が、噂の根強さを物語っています。
表向きの説明
これまでにデスワームとされる生物が捕獲された例はなく、標本も存在しません。正体の候補としてよく挙げられるのが、中央アジアの乾燥地帯に暮らすスナボアの仲間です。太く短い体で砂に潜る蛇で、ずんぐりした姿が「腸」に見えても不思議ではないと考えられています。
一方で、毒液を飛ばす、電気を放つといった特徴は、既知の生き物ではうまく説明できません。砂漠の厳しさや、見知らぬものへの畏れが、伝承の中で怪物の力を大きくしていった可能性も指摘されています。人がほとんど足を踏み入れない土地が広く残っていることもあり、調査を続ける人は今もいます。
ちなみに、この怪物の話を書き残したアンドリュースの探検隊は、1920年代のゴビ砂漠で恐竜の卵の化石を見つけたことで知られています。そばで見つかった恐竜は「卵泥棒」を意味するオヴィラプトルと名付けられましたが、のちの研究で、実は自分の卵を守っていた可能性が高いと分かりました。濡れ衣の名前だけが今も残っています。
さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら